「自分を飛躍的に成長させる状況」と「自分が潰されてしまう状況」の見分け方


「今が、戦うべき時なのか、逃げるべき時なのか」
この見極めができるかどうかで、
人生のかなりの部分が決まってしまいます。


自分を飛躍的に成長させるチャンスなのに、
それが災厄だと思いこんでそこから逃げ出してしまうと、
手を伸ばしさえすれば掴めた、きらめく未来はこぼれて、四散してしまいます。


逆に、いますぐ逃げ出さなきゃならない最悪の状況なのに、
そこにとどまって無理に無理を重ねて鬱病になると
あなたの未来は、腐って腐臭を放ち始めます。


その状況が、チャンスなのか、災厄なのかを決定づける要素として一番重要なのが、次の二つのバランスです。


(1)責任
(2)権限


たとえば「あるWebサービスを半年以内に黒字化してくれ」と言われたとします。
これは(1)責任に相当します。
この責任を引き受けるべきかどうかは、その責任を全うするための十分な(2)権限が与えられるかどうかで決まります。


このWebサービスを半年以内に黒字化するのに必要な予算、人員、各種裁量権が与えられていれば、これは自分を成長させるチャンスです。
人が努力によってポジションにふさわしい人間になることはほとんどなく、逆にポジションの方が人を育てるという現実があるからです。


しかし、それらの権限が与えられていなければ、これは無理難題です。
たとえば、最低でも中堅プログラマ2人が必要なのに、三流プログラマ1人しか与えられないのであれば、成功するはずがありません。


なのに、
無理難題を押しつけられたのに気づかずに
必死で努力しても、無理なものは無理
ですから、そのプロジェクトは必然的に失敗し、しかもその失敗の責任を負わされ、ダメ人間のレッテルを貼られ、無能な人間として扱われることになります。


それどころか、無理なものを安易に引き受けて失敗すると、自分だけでなく、周囲の人全員に被害が及び、みんなが迷惑します。


もちろん、上司は責任と権限のバランスを考えて部下に仕事を割り振るべきですが、とくに中小企業やベンチャーは慢性の中間管理職不足であるため、ろくな権限も与えないまま責任だけ押しつけるような無能な「なんちゃってマネージャ」がたくさんおり、この「責任権限バランス」がデタラメなことがよくあるのです。しかも、そういう無能な上司は自分が部下に与えた責任と権限のバランスが間違っていたことを、なかなか認めようとせず、失敗の責任を部下に押しつける傾向にあります。


このような被害に会わないためには、責任を引き受けるときには、必ず、その責任に見合った権限が与えられていることを確認しましょう。
口頭で確認するだけではあとで言った言わないで揉めますから、口頭で確認した後、そのとき決まったことを文章にして関係者にメールしておくべきでしょう。


もちろん、その責任を引き受ける段階では、まだ与えられる権限の詳細が決められないことも多いです。
そして、あとからその責任を果たすのに必要な時間、予算、人員を決めるときに、それらが不十分であれば、
「これだけの時間、予算、人員では、その目標達成はボクには無理です。最低でも、これだけの人員をアサインしてください。もしくは、目標達成時期か、目標利益額を変更してください。」と、しつこく食い下がって、責任と権限のバランスが合うまで交渉を続けます。


このとき、「○○でないと出来ません。」という言い方をすると非建設的な交渉になりがちなので、あくまで「□□ならできます。」という建設的な持っていき方をするのがコツです。もちろん、相手の事情も鑑みて、双方が納得できる落としどころに持っていくように誘導します。


ここまでやっても、まだ上司が無理を言ってくるようなら、責任と権限のバランスが取れていないことを、上司の上司に訴えましょう。また、上司に影響を及ぼすことができそうな、できるだけ多くの関係者に根回しして回りましょう。
そうやって、関係者全員が納得できる、無理のない責任権限バランスの落としどころを見つけましょう。


この交渉は、単に自己防衛のためだけに必要なのではありません。無理な仕事を安易に引き受けてデスマーチなどが引き起こされたら、自分だけでなく、部下も、上司も、顧客も、関係者全員に多大な被害を及ぼすことになります。だから、これは自己防衛戦と言うより、関係者全員を守るための戦いです。


そして、それらの努力にもかかわらず、どんなに交渉しても、責任と権限のバランスが見合うようにならないとしたら、交渉決裂です。
その仕事は引き受けるべきではありません。その決断が、関係者全員の幸せにつながります。


また、責任に見合った権限もないのに、無理矢理責任だけ押しつけられたら、それは「逃げるべき時」です。
全力で転職の準備を始めましょう。


また、上司があとから自分の責任範囲を超えることを言ってきたら、基本的には断りましょう。どうしてもと言ってきた場合、それと引き替えにプロジェクトの締め切りを延ばしてもらったり、プロジェクトの達成目標を下げてもらったりするなど、バーターで何かもらいましょう。そして、無理をきいてあげたことを恩に感じるような雰囲気にもっていきましょう。


それから、ここでは、特に重要なファクターとして責任と権限のバランスに注目しましたが、実際には、それを引き受ける自分の能力や余力も考慮に入れるべきです。現在の自分の能力に見合わない責任は負うべきではありません。能力の高い人にとってのチャンスは、必ずしも現在の自分にとってのチャンスではありません。もっというと、現在の自分の能力より少しだけ高い責任を負うと、いちばん成長します。
余力についても同じです。余力のあるときにはチャンスとなることであっても、余力のない時に引き受けるとそれは災厄になります。

追伸

「ウィンプは努力によってマッチョになることは出来るか?」という主旨の質問をうけましたので、回答しておきます。
→ 答えは「Yes」です。ただし、「努力」の内容によります。
とくに、日々の細かい意思決定で「戦うべき時と逃げるべき時の区別」が苦もなく自然につけられるようになってくれば、言い訳する必要もなくなり、だんだんマッチョ化してきます。